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TOKYO FRONTLINE 2023


グランプリ

伊波一志

from photography

 

 「from photography」は、1992年に奄美大島で撮られたただ1枚の祖母の洗骨写真を起点に、放射状にあるいは波紋を広げるように「コト」を展開していくプロジェクトです。そもそも概念からの出発ではなく、1枚の写真からの出発なので、粘土彫刻のように少しずつ肉付けしていき概念の骨格を顕現できるようにと考えました。そこで、祖母の洗骨写真を中心に、それにリンクする作品を1つ1つ制作していきました。具体的には、奄美の母の実家に残った大量の古写真・家族写真を主に使用し、まずは、バナキュラーな「家族写真」について、次に支持体としての紙である写真の「物質性・肉体性」について、さらには、ゲストキュレーターにセレクトから制作・展示までを任せることで「作者不在」について、考察・探求するための材料を提示しました。最終的に、「from photography」というプロジェクトが「コト」として広がり、現在進行形で変化しつづける「写真」という抽象概念の中身を問い続け、メディアとしての写真の可能性を追求することを目指しています。 

Instagram:@kazushi_iha


準グランプリ

中川桃子

​『LOVE patrol』

写真を撮影するという日常的な行為を” 世界の触診” となぞらえて、粘菌と共に生活を送りながら、

人間の皮膚や都市における建築物の壁など、その” 境界" とされてきたものをモチーフに制作を行う。

写真を利用した平面作品やインスタレーションを用いて自身の報酬系回路を刺激しながら身体性が希薄になる情報の海のなかで、人間という生命体がサバイブするための呼吸法を模索している。

Instagram: @mnohigeki

HP: onakayowai.studio.site


準グランプリ

余宮飛翔

『a mnesia』

空間の中に潜む蓄積された無数の記憶は、表層から枝分かれしたイメージから新たな空間を拡張し続け一つの空間を生み出しています。

それはタイムトラベルしているかのように出来上がります。イメージはタイムパラドクスの結果、ユートピアだったり、ディストピア、プロトピアなのかもしれません。

これは現実の世界と仮想空間との関係性を示唆し、アーティファクトの様でコントロールの効かない、まるで生命体の様な不確定な出現と私たちの存在を超えて存在しているのかもしれません。

Instagram:@tsubasayomiya

HP​: tsubasayomiya.com


 

川島崇志個人賞 佐々木敦個人賞

謝岳静(シャガクセイ XIE YUEJING)

『Atmosphere』 

写真とは、一人称の視点で自分の存在を記録できるものと考える。但し、私にとってこれは矛盾なプロセスである。その原因は、私は常に地域性があからさまにしない写真を撮影する。だが、これら自分の存在を証明できない場所を通して、自分の存在を見出したいである。この過程で私は苦労し、孤独感や薄い帰属意識を感じられ、常に不安な気持ちになっている。

まるで自分が大気圏の中にいるような感覚である。大気圏とは、地球の重力で混合している気体を取り巻く大気の領域である。重力は形がなく、目に見えない存在であり、大気圏は重力を可視化できた巨視的な表現である。これは「私」という概念と似ていると思う。「私」という概念は重力のような目に見えないものであったが、存在していることが確認されるであろう。

私がある特定な環境にいるとき、無意識的に雰囲気や感情な ど色んな情報を私に届いてくる。常に存在感をアピールしている。すなわち、彼らの物事は私の「大気圏」に構成していた。

Instagram: @emilyxie22


大山光平個人賞 港千尋個人賞


鈴木冬生

『斑』

私たちの住む世界は写真により各モーメントに解体され、それらの自在な組み合わせ、イメージの反復や類推によって新たな時空間を生み出す。

 

地面のシミや、蝶の斑紋が妄執的に現れてはさまざまな形に変奏され、このアナロジーを経路とするイメージの特異な空間は、現実に対する単なる混沌ではなく異なる秩序であると私は捉えている。

Instagram: @toisuzuki

 

ホンマタカシ個人賞 

藤﨑陽一

『空白のリアリティ』

「見る」こと、それは視覚構造であり見ることの不思議です。

物や事が写真に変換されると、どこかしら「現実性」とでも言うべきものがある。

それは写真の中にではなく、感覚の向こう側に前提している鏡の機能として外側にある。虚と実が相互に反転し合い絶えずこの二つの間で揺れる境界は定まらず、溶け合い入り混じっている。

具体的な場所のイメージが切り離されると、錯覚的な体験が惹き起こされ「見る」ことそのものが揺さぶられる。 潜在的な情報、リアリティの誘惑、思い込みやズレ、非現実な違和感や想像が入り込み、写真を見ている場そのものと、鑑賞者と対象との記憶の関係を問いかけます。

Instagram:@yoichi_fujisaki

 

小山泰介個人賞

森凌我

『ぺけ / Cross out』

 

よくない、間違ったものを削除する際につけるバツ印を“ぺけ(Cross out)”という。私は自身の写真にぺけをつけて、現実を透過した風景を見ることを試みた。線を引いて削除、バツという意味の上塗り。写真を文字通り削り、あるいは重ね合わせ、ありのままの光景をNo goodと断じていく。繰り返されるスクラッチアンドペーストにより変貌した画像は、私たちの目やカメラが写す諸要素を透過し、見えているものではなく見出されるものの姿へと近づいていく。

Instagram: @moriryoga

HP: ryogamori.com

 

多和田有希個人賞

高野勇二
 

(Untitled)

 

なにげなくSNSを見ているとき、私はもう一つの世界を覗いてしまったと感じた。

それは戦慄という感情を伴うものであった。その荒れた、輪郭のぼやけた画像はイメージの隙間を埋めるように、私の記憶の中から恐怖や不安を引き出したのだ。

この作品群は、デジタル加工により遠近感の無くなった写真を拡大印刷した後、特殊な技法を使いぼかしたり、横に吹く風のように或いは地上に降り注ぐ雨のようにシュプールを引き伸ばして写真を壊していく。

すると、写真は奥行きの無い平面的な絵画のように変容する。この一連の流れを踏んで、写真は固有の文脈から解放され、その形象は抽象的になる。これは、ただ写真を絵画的に見せるための作業ではない。

カメラや携帯で撮った写真やSNSに上がっている画像は本来あるがままにものを写し、ある特定のイメージを伝えようとしている。

しかし、絵画に置き換えられた写真は共通して個々人に様々な印象を引き出させる。

それは、写真であった時のイメージが壊されたが故に、個々人の経験がそれを再構成しようとするからであろう。

この作品群とそれぞれの人の記憶は感情という点で結ばれ、幻影を投影している。


Instagram: @yuujitakano_artwork

 

後藤繁雄個人賞

神威惟明

『Squares』

緊急事態宣言で日中の外出が制限される中、国から推奨されていた体力維持のため夜の散歩で訪れていた夜の公園で遊具の撮影を続けていた。子供の頃に小型のゲーム端末を持ってジャングルジムの上を占領して遊ぶ子供たちの輪に入れなかった自分にとって、公園と遊具は孤独の記憶と結びつく場所であった。
撮影をする中で公園や学校に設置されている遊具の歴史は、人々に均一化を求める近代化の歴史とつながりがあり、西欧式の国家づくりが進む中で、国民が近代的な”軍隊に適した身体”の獲得のために体操などと共に導入された歴史があることを知った。標準化されデザインされた遊戯の形態を、周囲のコンテクストを外し、事物そのものを見つめる時、遊具は何を語るだろうか?
公園は社会と個人が初めて出会う場所だと思う。
私は写真を用いて社会に立ち現れる表層を通じ、人と社会とその関係を考えている。


Instagram: @kamui_koreaki

HP: photokk.net

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