
TOKYO FRONTLINE 2021
グランプリ・大山光平個人賞
前田梨那 Rina Maeda
『Tune』
私の制作において根底にある興味は、境界です。
境界は内と外を分け、私を自立させるために必要な物ですが、隔てることで異質なものとして他者が現れてきます。
写真は他者を呼び込むための罠のようなものです。作品は、友達や知り合いに声をかけ手伝って貰ったり、現像の手順を組み替えイメージと偶然を触れ合わせながら制作しています。
写真という他者を通して境界を考えることで人と人の関係性について考えています。
HP:https://mpear71.wixsite.com/mysite
Instagram:@qiantianrina31
準グランプリ
porriM(稲葉知洋 / 岩根亮太)
『No title』
軽トラックを改造したカメラ・オブスクラによる作品。
私達にとって制作とは写真から生じる疑問を作品に還元することです。
写真に対する考え方の角度を変え、再認識を繰り返す。
それによって少しずつ写真の輪郭を掴もうとしています。
Instagram: @porrim_official
ホンマタカシ個人賞
Han Kyoungho
『The North Context』
私はソウルで生まれて40年そこにいた。その中の20年は、建築学科の学生から仕事としてまで、常に建物を見ながら住んでいた。ソウルでは、建物は人が歩くスピードの中で存在している。視点が変わる速度は人が歩く速度と同じであり、周囲の建物や風景は共在している。建築家達はこれをcontextだと呼んでいた。
結婚をきっかけに、突然移住することになった北海道の田舎。ここでも目に入るのは建物だ。しかし私の住む田舎町では、移動手段はほぼ車である。建物は車のスピードの中で存在していた。時速数十キロで流れる白い世界の中で一瞬、目を奪うオブジェクトのような建物。カラフルな建物だけではない、オイルタンク、木、多様な構造物。残像として頭に残るその姿を確かめようと車を降りると、世界は静止し、先程の構造物は雪の中で力を失っている。北海道のcontextは流れている背景、その中で独立して存在していた。
この不思議なcontextを写真で撮りたい。ヒントになったのはMarcel Duchampの「階段を降りる裸婦」だ。モデルが階段を降りてくる動きを表現したこの絵でも階段は静止している。背景を動かせないなら、カメラが動けばいい。次のヒントは建築の透視図だ。一点透視図では、視点が左右に動くと形が変わらないまま、背景だけが変わる。建物の歪みのない標準レンズに近い画角で、何枚かを撮る。これを建物を中心にして重ね、一枚の写真が完成した。さらに立体である構造物も、写真になれば平面になり、額縁が必要になる。それなら額縁が構造物、同じく自立している木にすれば面白いかもしれない。北国の薪を使って、実験した。
千葉雅也個人賞
又野一騎
『通常撮影(仮)』
『液晶画面は別次元の扉へ、或いは情報・監視収集の手段として』という言葉を聞いて思うことがあった。スクリーンの中に表示されているウインドウを窓と思い込んでいた、ごみ箱をゴミ箱と認識していた。小学校からPCとともに歩んできた。インターネットは冒険だった。私たちはデジタルと現実世界を行き来する、あるようで無い写真がサイバースペースに保存されている都会っ子による都会っ子の風景。日常をゲームみたいに撮りたかった。Wifiが早かろうがどこか便利になっても、あほみたいなニュースや事件ばかり、でもゲームじゃない。
これからもスクリーンとインターネットと生きていきたい。
Instagram: @kazuki_matano